何年も前のことです。
締切に追われて仕事をしていたときに、同僚の女性が席に近づいてきました。
「いま、ちょっとお時間ありますか?」
「手が離せないのですが、お急ぎですか?」
「今じゃないと、だめなんです」
こうしたやりとりの後、ちょっと面倒くさいな、と思いながら、手を引かれて階段の踊り場に行きました。
窓の外に、大きな夕日がぽっかりと浮かんでいました。
時の流れが、一瞬、止まったようでした。
「これを見せたかったんです」
書類に埋もれたモノトーンの日々のなか、差し色のような同僚の笑顔が思い出されて、懐かしくなりました。