ばっちゃん

ある番組※で、「ばっちゃん」と呼ばれるボランティアの保護司の特集をしていました。
ばっちゃんは、30年以上、居場所の無い少年少女たちを自宅アパートに受け入れ、ごはんを食べさせ、話を聴きます。

「おかえり、おかえり」
「えらかった、えらかった」
ばっちゃんの口ぐせです。

「罪をおかしてしまう子どもたちはおなかをすかせている」ことに気づいたばっちゃんは、いつ来るとも知れない子どものために、いつも手料理を用意して待っています。

子どもが友人を連れて、一人また一人と人数が増えてくると、カレーを作っていたばっちゃんは、水道の蛇口を伸ばして鍋に水を足してゆきます。
「ちょっと人数が増えるけん水入れて…なんぼでも増えるけん便利よ」と笑いながら言いました。
何杯にも増えていくカレーや、決して広くは無いお部屋におおぜいの子どもたちがくつろぐ姿を見ると、汲めども尽きないばっちゃんの愛情を感じて、胸が熱くなりました。

いっぽうで、「心の居場所がないことが一番つらい」と、かすかな笑顔で話す子どもの深い孤独が胸に迫ります。

なぜ続けられるのか、という質問に、「私にもようわからんのよ」「しょっちゅうヒス起こすことが多いよね」「つらいばっかり」と、きれいごとではない本音が語られます。
それでも、「子どもから面と向かって、助けて、と言われたことがない人にはわからないんじゃない」と、ばっちゃんは答えます。

親が悪い、学校が悪い、社会が悪い。
批判するのは簡単ですが、その前に、わたしは誰かの心の居場所になれているだろうかと、しばらく考えてしまいました。


NHKスペシャル「ばっちゃん〜子どもたちが立ち直る居場所〜」(2017年11月3日放映、再放送)

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